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産業技術大学院大学(公立大学法人 首都大学東京) 情報アーキテクチャ専攻 Web版InfoPress [社会人大学院][東京都品川区][IT]

PBL: Project Based Learning(概要編)

PBL型科目

本学では、2006年の開学時から社会人が多数参加する大学院レベルでのPBL(Project Based Learning)の教育手法を積極的に開発し、 PBL型科目での活動を通常の大学院の修士論文(研究活動)相当に位置付けています。当情報アーキテクチャ専攻ではPBL型科目を2年次の必修科目として設置し、当専攻の学生は、原則2年次の時間のすべてをPBLに使います。

以下の「知識体系・知識単位」で言及しましたが、当専攻では、情報アーキテクトに必要とされる知識・スキル・業務遂行能力(コンピテンシ)の知識体系を5段階から構成される知識単位で定義しています。

第1段階は、「A: 情報アーキテクトに必要とされる知識・スキル」と「B: 情報アーキテクトに必要とされる業務遂行能力(コンピテンシー)」として整理され、概ね、前者の知識単位群Aは1年次の講義・演習型科目で修得し、後者の知識単位群Bは2年次のPBL(Project Based Learning)型型科目で修得するように設計されています。

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PBL型教育は、医学・看護等の分野で導入されたのが始まりだと言われています。PBLといっても、既存の教材にしたがったシミュレーションだったり、数単位相当の時間のものだったり様々です。最近、PBLが一種の流行り言葉(buzzword)として使われ、単に「プロジェクト体験相当の活動」、「複数の学生が一緒に何らかの問題に取り組んでいる活動」であっても、PBLと呼ぶ、広義のPBLが氾濫していますが、教育であれば教育効果を高めるための教育メソッドの存在が不可欠であり、また到達目標、修得できる知識・スキル、評価のための基準等が必要です。また当専攻では、学生の今後の社会での活動を考慮し、活動計画、活動及び成果に関する品質等に対する意識が重要だと教育しています。当専攻のPBLは、大学院レベルの質・量で、企業・自治体等の外部組織と連携する等、実務に近い相当規模のプロジェクトを行うことが特徴です。

当専攻のPBL型科目では、当専攻独自のPBL教育メソッドにしたがって、実際の業務を想定したプロジェクトでの問題解決にあたることで、1年次で学んだ知識・スキルの活用経験を蓄積すると同時に、業務遂行能力(コンピテンシー)の知識単位群Bを修得します。

業務遂行能力(コンピテンシー

以下に、知識単位群Bの詳細を示します。

本学が提唱する「業務遂行能力(コンピテンシー)」に類似する概念には、多くの職場あるいは地域社会の諸々の人々と仕事をしていくために必要とされる基礎力を意味する「社会人基礎力」、問題解決・交渉等の非定型の対人的技能を意味する「ソフトスキル」等があります。当専攻では、高度専門職人材に必要とされる業務遂行能力として、「7つのコアコンピテンシー」、さらにこれらの源として「3つのメタコンピテンシー」を設定しています。したがって、知識単位群Bの知識体系は、B1: コミュニケーション、B2: 継続的学習・研究、B3: チーム活動の3つが「メタ・コンピテンシー」であり、B1-1からB3-2までの問題解決、システム提案・ネゴシエーション・説得、ファシリテーション・調整等の7つがコア・コンピテンシーとして、こちらは3段階で定義されています。

研究 vs. PBL

本学では、PBL型科目での活動を通常の大学院の修士論文(研究活動)相当に位置付けていますが、修士論文及び研究活動とは違うところがいろいろあります。

《成果・過程・評価》

通常の業務プロジェクトは成果はもちろんですが、計画に従った進捗も要求されます。当専攻のPBLでもプロジェクト計画を作成し、計画的に作業したり、計画を修正したりすることによってプロジェクト管理を学びます。成績は、PBLの「成果」及び「活動」を「質」及び「量」から評価します。研究活動であれば、前期は怠け、後期だけ頑張ることも許されるかもしれませんが、当専攻のPBLでは計画にしたがったプロジェクト進捗が期待されます。また、通常の大学院は概ね研究活動、論文執筆が目的ですが、当専攻では研究活動、修士論文の執筆・発表は必須ではありません。もちろんPBL活動の手段として研究活動をすることもありますし、成果として論文執筆、学会発表等を行う学生も多数います。

《PBL構成メンバ》

通常の大学院での研究活動は概ね孤高でありがちです。しかし、通常の業務では、単独で問題解決にあたることは稀で、通常は複数メンバからプロジェクトが構成されます。当専攻のPBLでも、これを反映し、5名程度のメンバからプロジェクトを構成し、問題解決のために協働作業を行います。社会人学生が多数を占める当専攻では、構成メンバの年齢・職業・職位・経験等は様々で、20代前半の社会人経験の無い学生、30代の適度に経験を積んだ技術者、50代の一流企業の部長級等、通常の大学院ではこうした体験は得られません。また各PBLは3名の教員が指導にあたります。

《経験の蓄積・業務遂行能力の修得》

通常の大学院の研究活動では、専門領域での研究のため、論文執筆のための知識・スキルを学び、修得します。当専攻のPBL型教育では、学生の皆さんのキャリアを意識し、IT高度専門職技術者として必要とされる知識・スキルの定着と、業務遂行能力(コンピテンシー)を明確に定義し、これらを効果的に学ぶための独自に教育メソッドによって修得します。

評価基準、PBL教育メソッド等に関しては、あらためて別途まとめたいと思います。