「アーキテクチャ」とは #1
「アーキテクチャ」って何だろう
今回は、当専攻の「アーキテクチャ」の話を、大学院説明会で使った資料を使って、まとめたいと思います。アーキテクチャという言葉はもともと建築の分野で使われていた言葉です。建築士は英語ではアーキテクトと呼びます。現在では、建築以外のIT関連のハードウェア、ソフトウェア、情報システム、また情報コンテンツ等でもアーキテクチャという言葉が使われることが増加しています。
このアーキテクチャという言葉を日本語に翻訳しようとすると、単純に置換できる言葉が無く、文脈・コンテキストによって意訳すると、
設計、概念、原則、構成、思想、環境、特徴、体系、仕組み等
と表現することができます。どれが最適かはコンテキストに寄りますが、情報システムでのコンテキストでは、ありきたりの言葉ですが「仕組み」という日本語が比較的落ち着きがいいと思っています。英語では、
Design、Concept、Principles、Structure、Environment、Organization、Plan、Description、Interrelationship、Guideline、System等
の単語を使って表現されることがあります。
インテル4004
次の写真は、インテル社が1971年に開発した、集積回路によるCPU、4004の内部回路ですが、これらハードウェアの設計のことをアーキテクチャと呼ぶこともあります。
東京ゲートブリッジ
次の写真は、2012年に開通した、東京湾にかかる東京ゲートブリッジですが、橋も一種の建築物ですから、橋の構造のことをアーキテクチャと呼びます。
東京湾には、横浜ベイブリッジ、レインボーブリッジ、鶴見つばさ橋、東京湾アクアラインと5橋があり、海等を跨ぐ道路を実現する建築物としてはこれらは同じですが、すべて違うアーキテクチャが選ばれています(横浜ベイブリッジと鶴見つばさ橋は類似のアーキテクチャですが細かくは違います)。何故、違うアーキテクチャが選ばれたのでしょうか。
アーキテクチャは制約と実現によって決定されます。東京ゲートブリッジの場合は、羽田空港が近く、上空を飛行機が飛ぶことによる高さの上限があり、また船舶の橋の下を航行することによる桁下の高さの下限があり、また海上を跨ぐ区間の長さはレインボーブリッジの約2倍であり、さらに軟弱地盤であったり、100年の耐用年数等の制約がありました。これら各種の制約と、実現可能性と、さらには何が正しいか、何が美しいかという判断から、この東京ゲートブリッジは、吊橋・斜張橋では無く、トラス橋として実現されています。
Obama For America
次の図は「Obama for America」と呼ばれる、オバマ米大統領が2012年の選挙活動を支援するための情報システムの構成の一部(約1/7のみ抜粋)です。
このシステムは、AWS(Amazonのクラウド環境)上に構築され、この抜粋された図からだけでも非常に多くのマシンから構成されているのがわかると思いますが、この背後には多数のアプリケーションのプログラムと、非常に多くのリクエストを処理でき、また安定して動き続ける仕組みが存在しています。情報システムは、東京ゲートブリッジのように誰にでもわかるものではありませんが、このように想像を超越する規模・複雑さ・制約の下にあって実現されています。情報システムでも、正しいアーキテクチャの決定は成功の要因を握り、非常に重要です。
続く。
大学院説明会
今回の記事で使ったスライドは、大学院説明会 資料(情報アーキテクチャ専攻)からの流用です。